2024年2月9日金曜日

スターバックスから見るトルコのカフェ文化と喫煙率

  先週の木曜日の夕方、ふと思い立ち、Skyscannerという格安航空券の予約サイトを開いた。すると、ニューカッスル(最寄りの空港)からトルコのアンタルヤへの激安航空券を見つけ、ノリで予約してしまった。しかもフライトは翌日の朝10時。急いで荷造りをし、3泊の旅がスタートした。弾丸一人旅、とでも呼んでしまおうか。

 アンタルヤはトルコ随一のリゾート地。年間晴天日数300日以上という過ごしやすさとアジア・ヨーロッパからのアクセスのしやすさ、そして安い物価(ミネラルウォーター1本20円、タクシー初乗り100円)が魅力で、毎年多くの観光客が足を運ぶ。2月なのにも関わらず、気温は18度。雪が降るダラムから、南国に辿り着いた気分だった

 僕は新しい国を訪れる際、必ずやることがある。スターバックス見学だ。実は、大学入学直後からスターバックスでアルバイトをしており、日本でも行ったことのない店舗を見つけると入店せずにはいられないほどのスターバックス好きで、アルバイトを始めてから今までに11カ国で約100店舗を訪れた。日本だけでも約1900店舗あるスターバックスは、店舗ごとに雰囲気も違えば店内環境も異なる。ましてや海外ともなれば尚更だ。他店舗で学んだことを持ち帰り、自店舗をより良くしていく方法を探っている。

 今回の旅行でも当然、ホテル到着後真っ先に近くにあるスターバックスを目指した。やはり、どの国・どの地域にも当たり前のようにあるスタバはすごいと思った。歩くこと3分、象徴であるサイレンのロゴが僕を迎えてくれた。「おかえりなさい」とその人魚が言ってくれているような気がして(そんなわけない)、心の中で「ただいま」と呟いてみた。一人旅は寂しいから、そんなことをしていないとやっていられない。

 しかし、この店舗は今まで訪れてきたスターバックスとは全く雰囲気が異なり、ナイトバーを彷彿とさせるような風貌だった。

僕は「何撮ってんだ」という視線を過敏に感じてしまう性格なため、
急いでシャッターを切り、分かりにくい写真になってしまった。

 とにかくテラス座席が広すぎるし、ほぼ満席状態。逆に、店内座席を利用している人はほとんどいない。今まで訪れた店舗のほとんどは店内座席の利用が基本でテラス座席は数席のみだったため、とても違和感を覚えた。しかし、テラスに足を踏み入れるとその理由がすぐに分かった。一人残らずタバコを吸っていたのである。

 また、街を散歩すると夜10時を回っているのに多くのカフェが営業しており、テラス席は混雑。そこでも皆タバコを吸っていた。さらに、他のスターバックスにも同様に大きなテラス席があり、利用率は高かった。つまり、スターバックスのテラス席が広いのは、「カフェでの喫煙希望者」という顧客層を呼び込むためなのではないか。スターバックス見学として店内を細部まで観察しようとしていたが、気付けばテラス席のことで頭がいっぱいになっていた。

アンタルヤにある別のスターバックスの店舗

 そこでまず国別喫煙率のデータを調べた。WHOが発表した2023年版の世界保健統計によると、日本の喫煙率は20.1%で世界89位に対し、トルコは30.7%で28位。喫煙率はトルコの方が高い。しかしここで2つの疑問が浮かび上がった。一つ目は、日本とトルコとの喫煙率に大差がないと感じたこと。日本は5人に1人が喫煙者なのに対し、トルコは4人に1人。この違いが、スターバックスのテラスの大きさ・利用率をここまで変えるとは思えない。二つ目は、喫煙率がトルコより高い19位のフランスとの比較。僕は12月にパリを訪れ、もちろんスターバックス見学もしたのだが、僕が見たパリの5店舗にはいずれも小さなテラス席しかないか、店内座席のみだった。だとすると、トルコのスターバックスのテラス席が広いのは、喫煙率の高さのみが影響しているわけではないと思った。

 次に、僕が宿泊していたホテルの従業員の方にトルコの喫煙事情について聞いてみた。彼はタバコを吸わないそうだが、「昔はみんな吸っていたよ」と言う。ただ、ここ10年で喫煙率は徐々に減少しているらしい。路上喫煙も問題なく、タバコに対する考え方が日本と比べ大分オープンであるという印象を受けた。カフェのテラス席が多いことについても聞きたかったが、忘れていた。そんなこともある。

 喫煙率だけが原因ではないのなら、カフェが大切な交流の場であるという文化的価値観が根付いているのではないかと考えた。よく見ると、1人でカフェを利用している人が少なく、ほぼ全員が複数人で談笑していたのだ。また、高校の世界史で、中世だかいつかのカフェは文化の中心地で、そこから宗教が生まれたり政治が行われたりしていたということを習った覚えがあった。そこで、インターネットで調べてみた。すると、何とトルコはカフェの発祥地らしい。16世紀、オスマン帝国時代にコーヒーが持ち込まれ、世界初のコーヒーハウスができた。そしてやはり、カフェが社交の場となっており、文化、哲学、宗教が語られる文化の中心地だったそうなのだ。

 なるほど。では、トルコのスターバックスでテラス席がとても広く、タバコを吸いながら複数人で利用している客が多かったのは、カフェが未だに社交の場として用いられていること、比較的高い喫煙率、そしてタバコにオープンな文化が理由なのだろう。そう自分の中で結論づけ、ようやくスターバックス見学が再開した。

生まれて初めて飲んだトルココーヒー。
水から煮立て、上澄みだけを飲む淹れ方らしい。
エスプレッソショットに近い味わいかと思えば、下の方はドロドロで面白かった。

 

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