僕が今、喜んだり悲しんだりできるのは、生きているからです。もし命がなければ、考えることも、遊ぶことも、苦しむこともできません。
僕は、苦しい時だからこそ命の大切さについて、本気で考えなくてはならないのだと思っています。受験に失敗したことはとてもショックです。でも、10か月前、僕は死にかけていました。あの時、生き残れたからこそ、今、悲しんだり、苦しんだりすることができるのです。
僕が、上廣倫理財団主催「第27回感動作文コンクール」で全国第二席を受賞した作文、「生きてるって、すごい」を紹介します。皆さんも苦労があると思いますが、そんな時こそ、命のありがたさを考えましょう!!
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「生きてるって、すごい」
東京都 学校法人 啓明学園六年 関 慶志
体中のとてつもない激痛と止まらないおうと。僕の悲鳴が何日間も小児科病棟に響き渡った。その後集中治りょう室に移されて一週間、テレビのドラマでしか見たことがないような医療機器に囲まれた。麻薬点滴で痛みは少し抑えられたが、時に意識がもうろうとしてしまう。誰にも言わなかったが、僕は本気で死を覚悟した。「たぶん、もうだめだ」
父の仕事の都合で3月までネパールで暮らした。そして帰国直後に体調を崩し検査を受けた結果、腸チフスと腸管出血性大腸菌感染症という病気が見つかった。特に腸チフスは日本にはないウイルスだ。すぐにかくり病棟に入院し抗生物質を二週間投与し続けた。入院して三日で痛みは少なくなり、部屋から出れずにひまだった以外に苦労はなかった。
しかし、ここから悲劇が始まった。退院数日後にいきなりがまんができないほどの激しい腹痛におそわれ、病院へ救急車で搬送されたのだ。検査の結果、総胆管結石と診断された。胆のうにできた石が胆管に詰まってしまう病気だ。僕の年の子どもにはとても珍しく、強い抗生剤を長期使用した副作用とのことだった。肝臓の機能がかなり悪くなってしまっており命にかかわると言われ、翌日に口から管を入れて石を取り除く手術をすることになった。痛みと戦っていた。僕は、
「手術が終われば楽になるよ」
というお医者さんや両親の言葉を信じた。
このイラストはプロの方が描いてくれました。 |
残念なことに、手術後は痛くなくなるどころが、逆にひどくなった。あの時の痛みは言葉では表せないほどだ。さらに数えきれないほど吐いた。再検査の結果、手術後の後に一パーセントの確率で起こる急性すい炎にかかってしまったことがわかった。お医者さんは僕に、
「お腹全体が火事になってしまったから消火活動をしている」
と話してくれたが、将来医者になることを目指している僕は、病気のことが少しわかる。だから病名を聞いただけで重症だということがわかった。集中治療室での注射に赤字で大きく書かれている「麻」の意味もすぐに理解した。「本当に死んでしまうかもしれない。」
「死」を意識したあの時の感覚を説明するのは難しい。しかし一番強く感じたのは「死にたくない」という気持ちだった。「死にたくない、助けて」と心の中で繰り返していた。
二十%以上の確率で命を落とす状態だったと聞かされたのは後の話しだが、僕は運よく生き残り普通の生活に戻ることができた。通院は続いているが今のところ問題ない。
僕は、今自分が生きていることに感動している。外国にいたり、入院していたりで学校の勉強が遅れていて苦しいことも悩み事もある。でも、命がなければ苦しむことも悩むこともできないのだ。生きるということは素晴らしいこと。生きていることの感動をこれからも多くの人に伝えていきたい。
今では僕に命の大切さを教えてくれた病気に感謝している。「生きているってすごい。」
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